デジタルな戯言

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【1】GTAの備忘録 -分析手法の概要把握と背景説明-

このナンバリングでは、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下GTA)について取り扱っていきます。

 

 

背景説明

私は現在大学4年生なのですが、多くの学生の例に漏れず卒業論文に追われる日々を過ごしています。

 

リサーチクエッションは「就職活動をする学生がどのようにして"成功"の定義を形成するか、またそれはどのようなプロセスを経て変化していくか」というものです。(副題も入れている&まだ完璧に定まっていないこともあって若干長めです。)

分析対象は2016年度に就職活動を行っている17卒の学生です。実際の年齢や学部・院の違いなどは考慮しません。また、それに加えて「絶対内定」などの、いわゆる就活マニュアル本をテクスト分析することにより、外的な影響と就活生自身の中にある内的な要因双方の観点から成功の定義の変化を観測していく手法を採ります。

 

ここで問題になるのが、分析対象になり得るサンプルの数と偏りへの懸念です。私が学部生であり、大々的な質問紙調査をするためのコミュニティに参加できていないということに加えて、仮に既存のコミュニティ内(Facebookなど)で質問紙調査をしたとしても、範囲の狭さからどうしてもデータに偏りが出てしまう可能性があります。

そこで教授に相談してみたところ、GTAなる分析手法を紹介されました。

 

少し手を出してみた感じだと、私の研究と非常に相性が良さそうなので使ってみることにしました。ただ、構造が非常に難解かつ抽象度の高いデータを取り扱わなければいけない分析手法なので、自分の備忘録として分かったことや実践したことなどを書き留めて迷った時の道標にしていこうと思っています。

 

GTAの概要把握

 

グラウンデッド・セオリー・アプローチは、データをもとにして分析を進め(ここからgroundedと名付けられています)、データの中にある現象がどのようなメカニズムで生じているのかを「理論」として示そうとする研究法です。(戈木クレイグヒル, 2016)

 

戈木クレイグヒル氏は、看護学で博士号を取っている研究者であり、同時に日本におけるGTAに在り方に大きな影響を与えている人物でもあります。

 

GTAは元を辿れば社会学者であるAnselm L.Strauss及びBarney G.Glaserによって生み出された分析手法でした。しかし、2人の立場や研究領域の違いから意見が分かれ、それに伴いGTAという分析手法も2本の枝を伸ばすことになります。どちらの手法も独自の進化を遂げながら一定の評価を得てきたため、現在では、Strauss版とGlaser版の両方が世界で広く使われています。

それとは別に、日本には同じく独自の進化を遂げたM-GTAという分析手法が存在しますが、戈木クレイグヒル氏の論文を少し読んだ限りだと、彼女はこのM-GTAという手法に対して多少懐疑的な姿勢であるように感じます。

 

グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いたデータ収集法

グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いたデータ収集法

 

 

この本の中で彼女は、現在出回っている論文の中でGTAという分析手法がいかに間違った使われ方をしているかを斬りつつ、正しいGTAの使い方について懇切丁寧に解説しています。少し洒落た言い方をするならGTAの監視者といったところでしょうか。

 

戈木クレイグヒル氏は、GTAが2つに分かれた以降Straussの共同研究者を務めていたJ.Corbinに長年師事しており、GTAの正しい在り方という点については並々ならぬ思いがあるのだと予想されます。また、彼女はStrauss&Corbin版GTAを更に昇華させ、戈木クレイグヒルGTAを確立させています。ただ、基本はStrauss版の延長線上にあるため他の手法(Barney版GTA, M-GTAなど)のような変化ではなく味付け程度の変化みたいです。

 

戈木クレイグヒル氏の書籍を少し読み漁ってみると、GTAについての定義や適している研究などが初学者にとっても非常に分かりやすく且つ明確に記されていたため、私の研究ではこの「戈木クレイグヒルGTA」を用いることにしました。

 

実際の研究では下の書籍を用いて、分析を進めながら同時に学んでいくやり方を採ります。分析手法の全容を把握しないまま研究を始めるのは、あまり好ましいやり方ではありませんが実はあまり時間がないので妥協します。

 

グラウンデッド・セオリー・アプローチ 改訂版  理論を生みだすまで (ワードマップ)

グラウンデッド・セオリー・アプローチ 改訂版 理論を生みだすまで (ワードマップ)

 

 

まさかGTAの成り立ちや歴史を振り返るだけで2000字を超えるとは思いませんでした。まだ概要把握のスタートラインにすら触れられていない気がしますが、一度ここで切って残りは次の記事に回そうと思います。